QCCSとは (機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ)
QCCS、英語表記だとQuantom Cryptography Communication System。
訳すと量子暗号通信システムだろうか。
量子暗号とは、量子力学の原理を使って通信経路上での盗聴や改ざんを原理的に必ず検出できる(=完全に秘匿できる)秘密通信技術の一つである。
現在の技術では通信経路長に制限があり、光ファイバーだと百キロオーダー、大気の密度の低い上空で400kmだそうだ。
真空度が高ければ原理的には長距離通信も可能なはずで、鉄華団とテイワズとの通信等で使われているように、火星-木星間も夢ではないと思う。ただ、通信経路上は安全というだけで受信機・送信機・中継器で盗聴・改ざんされる可能性は十分ある。ゆえにシステム全体が安全かどうかは別問題である。
さらに、経路上での光子の反応(損失)が一定以上あれば通信は成立しない。地上で専用線ありきの通信ならともかく、宇宙で軍事目的に使う場合はかなり妨害しやすい通信方式と言えるだろう。
アニメなのでその辺はうまいことやっている設定なのだろうが。
以下、現実の技術になるべく準拠するように解釈した、作中での設定(の妄想)を述べる。
QCCSの対義語としてLCS (Laser Communication System) というのがあり、可視光レーザーを使う通信のようだ。暗号通信も可能だが経路上の盗聴・改ざんは原理的に防ぐことはできない。セキュリティの弱い通信方式として扱われている模様。敵との通信はこのLCSを通じて暗号化せずに行っているのだろう。
対して量子暗号の場合、送信側と受信側で事前に乱数表を交換しておかなければならない。この手段はおそらく直接的な接触によるものである可能性が高い。なぜならば、乱数表の長さは通信の長さと同等であり、QCCSの通信で乱数表を送るということは原理上不可能であるからである。郵送で送る手もないわけではないだろうが、途中で紛失する可能性を考えると直接会った時に交換するのが望ましいはずである。
つまり、QCCSで通信しているのは、面識が有り一定の信頼がおける相手との通信であると言える。乱数表が流出してしまえば通信相手が偽装されてしまう恐れがあるので、信頼できない相手と乱数表を交換はしないだろう。
27話で鉄華団とテイワズのマクマード・バリストンがQCCSで通信しているということはそういう間柄になったということだし、ノブリス・ゴルドンとマクマードがQCCSで通信しているということは事前にQCCSを使う可能性を想定していたという推測が成り立つ。
30話からの地球支部と火星の本部で連絡が取れていない問題は、QCCSの乱数表を管理していたのがラディーチェ・リロトという監査役とチャド・チャダーンだけであり、チャドがいなくなってからはラディーチェにしか火星と通信ができない状態になったところに原因がある。
情報戦がストーリーの鍵になっているため、QCCSの特殊な通信手法による前提条件も、劇を成立させるために必要不可欠な役割を果たしていたと言えよう。
画像は27話より
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以降、詳細な解説をつけないが事実だけ
39話 セブンスターズのイオク・クジャンとテイワズのジャスレイ・ドノミコルスとの通信は不明
39話 タービンズの名瀬・タービンと鉄華団のオルガ・イツカはQCCS
40話 テイワズのマクマード・バリストンとタービンズの名瀬・タービンとはLCS
41話 鉄華団のオルガ・イツカとセブンスターズのマクギリス・ファリドとは不明